潮干狩り独り言

 
 昔、子供の頃よく食べた串アサリを見かけなくなった と気付いたのは十数年前。そこで色々人に聞いてみると、半田市亀崎のスーパーで売っているという。すぐに買いに行った。が高い。確か一串200円位していた。一串にアサリが6個ぶら下がっているから、一粒33.3円!お金を出してまで買う気になれない。こうなっては作るしかないぞ。ここから私の潮干狩り人生?が始まったのである。

 だいたい潮干狩りなんて女、子供がやるもんだ、という固定観念を持っていた。しかもアサリは海に行けばいくらでもタダで採れると思っていた。ところが、悲しいかな、近所の海は汚染されていて、しかも埋め立てられ干潟さえもうない。子供の頃よく遊んだ干潟が懐かしい。ムツゴロウに似たトビハゼだっていたもんな。今では干潟が出来てもそこで採ったアサリを食べるには、ちょっと覚悟がいる。そこで有料の潮干狩り場に行くことにした。(ホントは魚屋でアサリを買えばいいのにね?)

 3月のまだ冷たい海、園児だったミューを連れて、その日解禁の三河鳥羽海岸に行った。まだ寒い時期なので子連れは少ない。真剣に小さなアサリを掘ってて、ふと見上げると名古屋テレビと書かれたカメラで、ミューと一緒の若いお父さん(私)が撮影されていた。子供と一緒は潮干狩りにいい素材だったんだろう。これが潮干狩りでの マスメディア初登場だった。もちろん「今日のニュース」はビデオ録画して僅か数秒を、繰り返し何度も見た(^^ゞ  しかしその夜、ミューは風邪を引いてしまい熱を出してしまった。ゴメンね。

 梶島の解禁日の行列にも並んだ。ここは潮干狩りフリークが多く、解禁日が平日でも、会社を休んでまで来る人が いっぱいいる。当時は船で島に渡ってから、時間になると笛の合図と共に2時間採り放題だった。笛の合図が有るまでは しゃがむと監視員に怒られる。みんな各々目を付けた場所で、合図があるまで 立って待っているのだ。ただ立っているが、みんな片足は動かしている。足で掘りながらアサリの感触を確かめているのだ。分からないように岩陰で隠れて掘っている者もいるが、それはすぐバレて、マイクで叱られる。いい大人が何だか情けない。小学生の遠足に来て、先生に叱られているみたいだ。監視員は1人。お客は300人くらい いただろうか。「ピー」っと笛がなった。一斉にスタートして掘り出した。だがこれは誰かが仕掛けたウソの笛の合図。時間になってないのでおかしいと思ったが、数の論理からして もう暴動のごとく収まらない。と思ったが、ハンドマイクからの罵声で全員、掘るのを止めさせられた。この監視員の迫力には参った〜(^^; フツウの人とは思えない迫力だったね。でもこの梶島の島アサリは特に旨かった。

 「たかがアサリ、されどアサリ。」潮干狩りは奥が深い。1月の下旬。雪のちらちら舞う中、夜中に同年のNちゃんとアサリを掘りに行った。というのは当時水槽で海水魚を飼っていて、この前夜に私は子供のソウと水槽に入れるイソギンチャクを捕まえにいったのだ。夜中に磯場で懐中電灯を照らして海の中を覗くと別世界が覗ける。エビやカニ、ナマコがいろいろいて面白い。釣りエサのたぶん岩虫?を掘っているオジサンが「あんたらあ何やっとるだん?」と言うので、「イソギンチャク採っとるだよ。」と事情を説明した。そしたら、「アサリでも採っとるんかと思った。」と言うのだ。その時「おお!アサリが採れるのか〜♪」と思った。

 で、翌日Nちゃんと二人で出掛けたのだ。掘ってみると掘れる掘れる。30分でバケツ一杯。岩場の大きなアサリがウジャウジャ採れるのだ。2,3回通った。地元のおばちゃんもいる。真夜中にの真冬のナイター潮干狩りを満喫。ウジャウジャ、デカイアサリが出てくるので寒さなんて感じなかった。

 ある夜、いっぱい掘ったのでもう帰ろうかという時、遠くから木枯らしに乗って「お〜い、お〜〜い」と声がする。「何いってんだい。」と思っていたら、だんだん声が近くなって来て、「採っちゃあかんぞ〜〜」というのだ。「なんだあ、ここは採っちゃあいかん所か。」と言って、私はこっそりと、Nちゃんは大胆にも海でバシャバシャとアサリを洗ってから帰路についたのでありました。採っちゃあいかんなら、『採っちゃいかん!』と書いておけばいいのにね。もちろん今は書いてあります。あのアサリも特別美味しかったなあ。声の主がフツウの人で良かった。

 潮干狩りもだいぶベテランになってきた1999年秋。ホームページを公開した。その中で「潮干狩り」をテーマにしたページを作った。春になると、そのホームページへの訪問者が急に増え始めた。初めは訳が分からなかったが、潮干狩りの人気は凄いのだ。みんな情報を欲しがっているのだ。ある日突然、中京テレビの「クスクス」という番組から出演依頼があった。佐久の島でアサリを掘っているところを撮らせてくれというのだ。恥ずかしい。でもちょっと話の種に出てみるか(^^; ということになって、佐久島に行って掘った。カメラ目線を気にしながら掘った。映ったテレビを見ると『潮干狩り名人 ○○□□(本名)さん』となっていた。ああ恥ずかしや〜 HPの威力は凄い。その後もyahooの今日のお勧めで紹介されると、1日に3000ものアクセスがあった。今年もアウトドア雑誌「Be-pal」で紹介して頂いた。ともあれ、実力の程は別として、いつの間にか潮干狩り名人になってしまった。

 ここで、潮干狩り素人さんに説明しておくが、三河湾のアサリは全国的にみても有名で、しかも旨いのだ。あさりの漁獲量は日本一。たくさん潮干狩り場もあります。遠くは長野方面からもやって来る。長野の人に「よう長野から はるばる来たねえ。」と言ったら、「愛知からスキーに来る方が気が知れん。」と言われてしまった。しかもスキーは高い。潮干狩りはお土産にいっぱい美味しいアサリを持ち帰られる。近所にも ちょっとした自慢だし、ステータスだよ。と教えてくれた。我々地元に住む者は 行かにゃあ損々ですね。

 有料潮干狩りの入場料は¥1400位です。ゲートがあって、そこでお金を払うと入場券とビニール袋を渡されます。袋いっぱいまで採れますが、それ以上は1Kg¥500の追加料金が掛かります。渡された袋には約4Kg詰め込められます。吉田海岸や衣崎海岸は採り放題ですが、今年は4Kgもなかなか採れなかったようです。もちろん潮干狩りですから小潮回りの潮の引かない日はやってません。採ったアサリは2、3時間砂出しして、その日にもう食べられます。クギを入れると砂を出しやすいと言うのは迷信のようです。

 今年は三河鳥羽海岸のアサリが絶好調とNちゃんから教えてもらい、よく通った。「あんたも好きねえ〜」と言いながらワイワイガヤガヤ泥にまみれて楽しく掘った。今年は何回もここに来ているので、大きなアサリが採れる場所は確認済み。袋いっぱいを軽くクリアーして、大粒ばかりをゲージで計って、選り分けて持ちかえります。帰りに市場に寄って、アサリを洗い、市場の水道から出る海水を汲んで持ち帰ります。身がパンパンで味噌汁にして良し、酒蒸しに良し、ヌタを作ったり、オシャレにパスタでボンゴレも良いですねえ〜。とにかくアサリは旨い。なぜか赤味噌、ネギ、ニンニクと相性が良いですね。殻のまま冷凍保存しても長〜く楽しめます。

 さて串アサリの話に戻そう。知っている限りでは今では亀崎の「○○」という所しか、製品として作っていないようだ。千葉の方でも作っているのを見たが、アレは昔食べた串アサリとちょっと違ってた。亀崎では潮干祭の時に串アサリを作る家庭が多いようだ。上手に串アサリを作るには、まず大きな元気なアサリを用意しなくてはならない。そして、ひも(タスキ)や水管を切らないように剥かなくてはならない。もちろん生のアサリを、である。剥いたアサリはタスキとタスキの間の方から水管を通して竹串を刺す。一串で6個だ。この串はやはり亀崎の「□□」という竹製品店で売っている。この店ではアサリ剥きナイフや、串に刺したアサリを乾かす為に吊す縄も売っている。この竹串であるが、大粒アサリ用と小粒用で長さが違う2種類の串が用意されている。しかし、この竹串、ちょっと値段が高いのでマッキーは自分で竹を割って作っている。よくある焼き鳥用の丸串では味に変わりはないものの、やはり風情がない。串の断面は四角がいい。

 串に刺したアサリは両端を縄紐に掛けて縄ばしご状にして干す。この時、縄紐は縒りがかかっているので、下からハシゴ状に刺して行くこと。好みや天気にもよるがだいたい1日だ。朝から天気が良いとお日さんのエネルギーをいっぱい吸収して、出来上がりもいい。ただしプロが作ったものはやはり上手だ。水管からババのあたりへの垂れ方が違う。最初は剥くときに水管が切れて焼き鳥のように真ん中に刺していたが、あれは串アサリとしてはメチャクチャ格好悪い。やはり水管を刺して、何か汚いものをぶら下げる形がよい。一串6本というのも訳がある。天麩羅にするとき1本まるごとでは大きすぎるので、ペンチで串を2または3つに切って鍋に入る大きさにして揚げる。ビールの摘みに最高です。焙って食べても美味しいね。こちらは日本酒が合うかな。竹串にへばり付いた水管は竹串がピカピカになるまで最後まで前歯で剥がして食べるのだ。

 ところで、マッキーが鮎釣りに行く奥三河の設楽町、寒狭川(豊川)にダムを作る計画がある。この川の水は冷たく澄んでいて、鮎も美味しい。周りには湧き水を汲む所も多く、多くの人が楽しみに訪れる。そしてこの寒狭川の水は三河湾にそそいで、美味しい三河湾の海の幸の源になっている。この不景気な時代に2000億もの我々の税金が投じられダムが作られるらしい。今も調査といって、何億もかけて作る事を前提とした調査がなされている。海を育てようとするには山を育てよ と言われているのに、時代錯誤もはなはだしい。ダムを作って喜ぶ受益者や、ダムが出来て喜ぶ受益者はたくさん居るだろう。でも、失う物も大きい事を考えなければ。一度失われた自然は戻っては来ない。三河湾の水質にも影響が出るだろう。2005年、環境をテーマにした万博、「愛、地球博」の次の大プロジェクトがダム作りなのかなあ? 鮎もアサリも大好きなマッキー、最後にちょっとグチってしまった。

2003.6記



99年 春 フィクションです
 鳥羽海岸に行きました。もちろん有料ですが、アサリを探すというよりは大きいアサリを、たくさんあるアサリの中から選ぶ、といった感じの所です。

 ここにも達人がいたのです。手拭いをほおかぶりしたバアさんです。多くの達人がそうしているように、彼女も採ったアサリを網の袋に入れて、堤防の出口で自慢そげにタバコをふかしているのです。若い女性がタバコを吸うのは嫌いですが、バアさんは周りの景色にマッチしています。いいなあ〜。今さら肺ガンなんか気にしていません。

 たくさんアサリを採って重い篭をぶら下げ、意気揚々と釣りで言うと「今日の竿頭(?)は俺だ」と言わんばかりに上がってきたのに、バアさんの収穫を見て唖然とします。横目で袋のアサリを見ると明らかに、自分と違った量と質であります。アサリの大きさ、色、量が違うのです。一級品と呼ばれるアサリの色は焦げ茶色で周りがほんの一条薄く黄色味帯びているのです。もちろん大きい。親指と人指し指で丸を作ったぐらいの大きさである。『まだまだヒヨコ』と思い知らされるのでありました。

 鳥羽海岸では桜が咲く頃が最も潮干狩りに良いようです。桜が咲くといえば、この頃は土筆は出ツクシ(冷笑)、タラの芽やワラビも時期で、もう少しするとタケノコとイッキにおいしい物が出てくる美味しい時期です。尚、知多半島のアサリはそれより1カ月遅れて旬が来ますが、三河湾のアサリの方が美味しく(と思う)、高値で取引されております。

 バアさんが採ったようなアサリが欲しい。真剣に考えました。掘る深さの問題か。いろんな場所を変わって掘ってもみました。しかしどうしても巡り会えません。そこでそっと気付かれねえように、尾行することにしやした。きっと秘密の場所があってそこで掘ってるにちげえねえ(江戸前)・・・・・・。

 しかし、この前のバアさんの顔は覚えているはずがない。若き美女ならともかく、この手は、みんなおなじにインプットされている。。。。無念。