テトラ マタカ船釣考テトラ





 セイゴ、フッコ、スズキなどと地方や成長度合によって色々な名前が付けられている魚ですが、今ひとつこの釣りは難しいのか簡単なのかよく分かりません。ただ、この地方でオオタロと呼ばれている大型スズキになると、巡り会うチャンスは少ないし、エサを食ったとしても、ハリ掛かりして取り込むまで,特に難しいと思います。最後まで気を抜けないところは大鯛よりもスリリングですね。

 20年前、初めて師崎の仕立て船に乗った時、ビギナーズラックでオオタロが掛かり船縁でバラしてしまい、船頭にしかられ(何で怒こられんといかんのか!)、そしたら直ぐにまたオオタロが掛かっちゃって、今度は何とか取り込めた事が、マッキーの師崎通いの始まりでありました。あの時釣られたのはオオタロでなくて、マッキーだったのかも知れません。

 3月になると春告魚と呼ばれるメバルが釣れだし、少し遅れて中旬頃、エサとなるコウナゴを追って来たマタカも釣れだします。この頃のマタカを『のぼりマタカ』と言い、いよいよ釣りの本格的なシーズンの到来です。この時期の釣り方はコウナゴをハリに付けて仕掛けを海底まで下ろし、今度は段々と道糸を海面近くまで手繰り上げて釣る方法です。『手繰り釣り』と言ってます。コウナゴは目刺しにしたり、下顎から頭部へ刺すチョンガケにします。頭を取ってチョンガケにしたりもします。要するに仕掛けの上げ下げが多いので、エサが回って仕掛けがクシャクシャにもつれない様にエサを付けるのがコツです。
 コウナゴは大きいものより新子がベターですが、コウナゴの多い年と少ない年、コウナゴの群の位置などで手繰り釣りが出来るかどうかが決まります。同じように手繰っているのですが各船頭、各釣人に釣果の差が出ます。流す場所にもよることは勿論ですが、潮流や水深によって手繰りのスピードを変えたりと、色々とコツがあるようです。アタリがあっても早アワセはバラシが多いので、アタリがあっても慌てす本アタリで合わせます。当たり前ですが魚探で見て、マダカの群が大きいときは良く掛かります。

 手繰りは一日中仕掛けを上げたり下げたりで大変なので、この釣り方は余り好きではなかったのですが、ルアー的な釣り方を意識するようになってから好きになりました。簡単で難しい釣りです。また、魚探に魚の反応が少ないときは、手繰らずに底でマダイやヒラメの嬉しい外道を密かに狙うこともあります。

コウナゴは海底の砂の中に潜るので、それを追ってセギョウセという場所で、何年も前に大マタカが釣れ盛った事もありましたが、不思議なもので最近は釣れませんね。

 コウナゴ漁も終わりエビが獲れるようになると手繰り釣りは終わり、エビエサにチェンジです。主にウタセエビやアカシャエビを使いますが、エビの殻がアカシャエビの方が硬いせいか、歯の弱い?マタカにとって、ウタセエビの方がご馳走のようです。アワセのタイミングもウタセエビとアカシャエビでは違うようです。
 
 胴付き3本枝バリ、ハリスの長さ一ヒロが標準です。ハリの大きさは伊勢尼の11〜12号位ですが、大きい方が魚の掛かりが良いのですが、エサが付け難くなります。エサ付けですがこれが大切で、エビの左右のひげや触角の間からハリを持っていって口から刺し、角の根元に僅かに針先が出るようにします。ハリ先が出過ぎると仕掛けの上げ下げの時にエビがクルクル回ってしまい、仕掛けがもつれたり、エビが自然な状態で泳げません。逆にハリ刺しが浅いと途中でエビが外れてしまいます。エビをハリに付けたら仕掛けを持ち上げてみて、ハリスとエビが直角に近くなっていればオッケーです。エサの付け方で一日の釣果に大きな差が出るので船頭さんに良く教わりましょう。

 仕掛けを投入して底を確認したら1〜3ヒロ仕掛けが底を切るようにしてアタリを待ちます。流し釣りの時は大体アタリのある棚は一定していますので、アタリのありそうな棚は船頭さんの指示に従います。釣っていてエサが取られたら仕掛けの枝の場所が上か下かも確認します。またアタリの出た場所も周りの景色を見て山ダテしておくと、次に流す時に集中できます。マタカは歯が鋭くないのでエビを咬み切らずにエビを食べます。

 アタリがあっても掛からない時はエサがクシャクシャにされていたり、少し傷つけられたり、ハリが刺した所と違う位置に刺さっていたりしていることが多いです。またマタカが近づくとエサのエビが跳ねて逃げる事があります。手釣りだとこのエビの「ツンツン」とした動きが分かることがあります。また、どちらかというとセイゴクラスの方がアタリがコスイ事が多いですね。


 一般的にはエビでマタカを釣っている時のアタリは小さな「コッ」です。慌てて手繰ります。竿釣りですとこのアタリは出にくいので、飲み込まれていることが多いですね。ただ、棚によって色んなアタリのパターンがあるのでフワフワっとしたり、いきなりガツーンもあります。逆に虫エサ(アオムシ)を使って釣るときはモゾモゾという感じで手に伝わってきます。やや遅アワセなのですが、手釣りだと早くアワセ過ぎてしまうことがあります。虫エサの付け方も太くて長く、傷の無いのをチョンガケにします。長いエサと仕掛けがもつれないように注意して投入することです。

 6月になると中ノ島や沖ノ島、片名・大井前で夜釣りが始まります。そして7月になると師崎前も解放されて昼間とは違った趣の釣りが楽しめます。潮にもよりますが解禁当初の方が魚がすれてなくて良く釣れる事が多いです。さらに釣っている時間帯に潮変わり(干潮か満潮)があると楽しめますね。夜釣りは釣りだけでなく、海面にエビや蟹が泳いできたり、遠くの夜景を見たりして、風物詩的な雰囲気が楽しめます。

 魚の取り込みはスリリングです。エラ洗いをしたり、最後まで抵抗したりします。船頭さんのマタカの取り込みを見ていると、小さいセイゴクラスは水面に魚が来たとき、ハリの掛かり具合を確認して上手く掛かっていたらそのまま船の中に引き抜きます。もたつくと返って外れやすくなるからです。また、大マタカクラスになると船縁で魚をタモで掬うというより、魚が跳んだ時にタモでキャッチする要領のようです。ここまでくると名人芸、見とれてしまいます。マッキーは掬ってもらっていますが・・・

 秋になっても「落ち」の時期までマタカは釣れますが、夜釣りの頃のマタカが一番脂がのっていて美味しく、逆に夏以降は真鯛や黒鯛が段々と美味しくなってくるので、マタカを狙って釣るというより、『ややうれしい外道』扱いになります。


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